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第6話・嫉妬してしまいまして 5

Auteur: 阿良春季
last update Dernière mise à jour: 2025-06-18 07:50:29

「よぉエクラ」

「グリモワールから二人がここにいるって聞いたから来てみたの。そういえばお昼だったわね」

「昼メシまだなのか?」

 アルマの言葉にエクラはこれ見よがしな溜め息を吐いた。

「ええ。もうグランツのバカがいらんことしたせいで大騒ぎよ」

 グランツと言う名前にそう言えばとミオが思い出す。彼も島にいるはずなのにまだ一度も会えていない。

 アルマが呆れた声を出す。

「何してんだよあいつ」

 その問いに忌々しげにエクラが眉間に皺を寄せて船着場の方をちらりと見やる。

「あの船の後ろの幽霊船よ。島の近くで遭遇したんだけど、グランツが鹵獲したら何かに使えるんじゃないかって砲撃して無理矢理ロープを巻いて連れてきたの」

 鹵獲とは戦場で敵の兵器や軍用品、物資などを奪い取ることである。

 しかし流石この幽霊島は災厄と呼ばれた赤竜の元棲処である。海竜に幽霊船にトラブルには事欠かない。

「なんだ、やっぱあの地鳴りはグランツの砲撃だったのか」

「そーよ。結局船内にはアンデット系の魔物しかいないし。まだ、船内にお宝があるに違いないってまだレイを連れて探してるけど絶対ないない」

 エクラがそう強く言い切った瞬間、ぐううっと彼女の腹の音が鳴る。聖女が気まずそうにその美貌を真顔にした。

「あの、召し上がりますか?こっちはまだ手をつけてないです」

 おずおずとミオが蒸かし芋をエクラに差し出す。途端エクラの美貌が春の木漏れ日も霞むほど輝いた。

「わあっ!ありがとう!とってもいい匂い!」

 遠慮なくミオから蒸かし芋を受け取るとエクラはパクリと大きな口で食いついた。

 瞬間彼女の瞳が一等星のようにパアッと煌めいた。

「美味しい!なにこれ初めて食べた!」

「ジャガイモです」

 ミオの返答にエクラは更にキラキラと美貌を輝かせる。

「へぇ、これが例の!ジャガイモ美味しい!ミオちゃんってばすごい!」

 キラキラしたその緑色の瞳と春の日差しのような輝く笑顔にミオもつられて思わず笑ってしまう。

 屈託のない人だ。

 レイが心を許すのも分かる。

(……っ)

 そう思うと胸がまたズキリと痛む。

 そんなミオの様子には気付かずに芋を食べながらエクラはミオに話しかけてきた。

「でもミオちゃんが良い子で本当よかった」

「え?」

「レイって、ほらすっごくチョロいでしょ?あいつ頼まれごと絶対断らないから」

「そう、なんです
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